クライン孝子  お知らせ



早くも10月の季節となりました。
庭の樹木が赤く染まって、やがて落ち葉となって、庭先を埋めております。

さても、9月は4日から19日まで日本に滞在しておりました。
9月11日は米同時多発テロ1年目でしたが、何と私は、三浦朱門先生と曽野綾子さんのご招待にあずかり国立小劇場にて文楽を観劇しました。お恥ずかしいことに文楽は初めて。 でも、感激して食い入るように見てしまいました。
出し物は近松門左衛門作『心中天網島』。ちなみに天皇陛下や皇后陛下も三浦朱門先生のご案内で、観劇されたそうです。

それから、ポプラ社出版の拙著「『対話』劣等生の眠たい日本人」に関しては、朝日の衛星テレビ「ニュースター」に森啓次郎氏司会で、出演しましたとき、森さんにテレビでわざわざ紹介して頂くという光栄にあずかりました。
その後も新聞や雑誌で紹介してもらっているということで、有り難いなと思っているいるところです。

それはさておき、この日本滞在中に小泉総理の訪朝というハップニングが起こり、私もその状況を目撃し、さっそくその感想文は、9月27日付産経新聞『正論」にて掲載していただきました。
これは辛口コラムに転載しました。ご覧頂ければ嬉しいです。


またその時の様子を「クライン孝子の日記」にて以下のようにまとめました。



■2002/09/20 (金) 北朝鮮拉致被害者家族横田さんのこと

2週間余の日本滞在を終えて、昨日ドイツへ帰って参りました。空港に夫が迎えにきてくれ、彼の顔を見てほっとしました。
機内ではゼネラルモーターのドイツ人技師が隣に座り、いろいろ談笑しました。
世界中を旅する彼も、フランクフルト空港に着くと、ほっとするって。
彼は二人の幼児の父親で、妻は小学校の教師。今はその職業を中断して子育てに専念しているそうです。

さて、日本滞在中に体験して出来事といえば、小泉首相の訪朝でした。
日本には70年当時に頻繁に起きた拉致事件を抱え込んでいるだけに、この訪朝には日本国民の目がいっせいに集まっていたと思います。私も陰ながらお手伝いしてきただけに、一体どうなるか、固唾を呑んで見守っておりました。

とりわけ「北朝鮮の拉致者を救う会」の皆様の約25年にわたるこの件に関する支援には頭の下がる思いがしているだけに・・・
その中での私の支援なんて、微々たるもの。

でも小泉訪朝前日、日比谷公会堂で行われた被害者家族とその支援活動グループの小泉首相への「拉致事件解決なくしての国交正常化なし」という大会には私も出席しました。
雨中にも関わらず会場は参加者とマスコミ関係者でむせ返るようで、大盛況だったようです。
顔見知りの国会議員さんもかなりおられ、開会に当たって正面舞台にて、評論家櫻井よしこ氏の司会で気勢を上げておられました。

そういう光景には不得手な私は、被害者家族の控え室にお邪魔し、横田めぐみさんのご家族とひとしきりとりとめのないお話をし、お別れました。

嬉しかったのは横田めぐみさんのお母さんのお顔がとっても明るかったこと。
「人間って、希望が見え始めるとあのように輝く」とお母さんと双子のお子さん(めぐみさんの弟)と軽い冗談をいい、笑って話していたのです。

ところがどうでしょう。
翌日の夕方(つまり17日の夕刻5時40分ごろ)、その日の仕事を終えて、ホテルに戻り、テレビをつけたら、あのめぐみさん死亡の悲報が耳に飛び込んで来ました。最初は聞き間違いかと思ったものです。そうでないと知るや、早速記者会見の行われている衆議院議員会館へとタクシーを飛ばしました。


会場に到着して、中へ入ろうとすると、守衛の方かな、呼びとめられ「どこの新聞社の方ですか?」って。
プレス証がないと中へ入れないというのです。仕方がないので、ドイツのプレス証を見せたら、「はい、どうぞ」。
フリーパス!ついでにお辞儀され「失礼しました」には、苦笑いしてしまいました。

それはさておき、会場はマスコミ関係者で一杯。
最初は後ろに立っていたのですが、そのうち席が開いたのでやっと座ることができました。横田さんご夫妻、有本ご夫妻の怒りの声は、新聞やテレビで伝えられたとおりです。
記者会見終了後、さっそく横田さんご家族を追って控え室に入りました。
そしてめぐみさんのお母さんの姿を見つけるや、「大変なことになってしまって」といったところ、「私はめぐみは亡くなっていないと信じています。ですから、今後も諦めずにきっと探し出してみせる」って。
この力強い言葉を聞いたとたん、私はめぐみさんの弟さんと手を取り合って、不覚にも、人目も憚らず、涙をとりこぼしてしまいました。
長くお邪魔してはご迷惑をお掛けすると思い、「頑張ってね」と言い残し、すぐホテルへ戻ってきましたけれど。
しばらくぼーとしていました。

その後、むらむらと腹が立ってきました。誰に対して?
もちろん、ここまで放置し、見てみぬふりをしただけでなく、こうした被害者の気持ちには何ら配慮されず、手を差し伸べずに、莫大なおカネやコメ支援をしてきた日本の政治家たちにです。
今でこそ、超党派による支援グループも拉致者救援に回って動いていますけれど、当時、彼らは一体何をしていたのか。政府も与党の自民党も、そして野党ですら、見てみぬフリをしてきた。その罪の大きさを思うと何となくやりきれなくなってしまいました。

小泉首相訪朝では、金正日総書記は拉致疑惑を認め、謝罪したとのこと。今後はこの言質をとったことで、徹底的に真相究明にあたるべきです。そうすれば、これまで「臭いものにふた」をしてきたうさんくさい事実がぼろぼろでてくる。
北朝鮮との橋渡しをしてきた暴力団やら、その暴力団と結託していた日本の政治家、さらにはその脅しを怖れて、故意に口を封じ、あえて真相に迫る事を避けてきたメデイア界を含めて。


というわけです。

今後ともよろしくお願いいたします。
クライン孝子




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