クライン孝子   お知らせ


 二月は逃げるといいますが、つい先ほど新年を迎えたかと思うと、もう二月も半ばになってしまいました。一月下旬、あわただしい日本帰国を終えて、ドイツへ帰ってきたとたん、息子が日本へ今日八日、発っていきました。
 
 息子は大学で経済を専攻しておりますが、そのカリキュラムの中に「研修」というのがあるのです。そのため、ドイツの大学では四ヶ月半ほど、どこかの企業や組織団体に入れてもらって、研修して社会勉強をすることを義務づけています。
 ドイツの大学は入学試験がない代わりに入学後の勉強が大変です。その都度、試験で良い成績を取っていないと、放校されるからです。「行きはよいよい、帰りは恐い」とはよくいったもので、息子に関してもいったい卒業までうまく持つのか、本当にひやひやしていました。
 
 それでも山はやっと越えたらしく、研修後は、卒業試験を受けるのみとなりました。その息子は大学在学中から、地方の新聞社でフリーライターとしてアルバイトをしていました。フランクフルトがユーロの拠点地となるや、NHKが新しく支局を開設されました、そこでも息子はアルバイトをしはじめ、支局長にとても可愛がられことになりました。 そんなときでした。NHKのとてもエライ方のおめがねにもかなうことができ、その方の尽力で、今回研修の運びとなりました。
 母親としては嬉しいのです。けれども私に似て息子もおっちょこちょいですので、NHKの皆様にご迷惑をお掛けしないかと、そのことがこれまた心配です。
 主人は典型的なドイツ人で厳格です。お小使いも航空運賃だけ払うといいます。そこで私がそっと、息子に私のへそくりの一部を渡しておきました。東京の物価は世界一高いと聞いているからで、余り不自由もさせられないからです。その代りに家計簿をつけ、余ったら返金するよう、言い渡しました。
 
 さて、話は代わります。
 いよいよポプラ社から「捨てない生活」が出版の運びとなり、二月中旬には本屋さんの店頭に並ぶことになりそうです。ゴミを中心とした環境問題は二十一世紀の最大課題となります。日本もきっとゴミに関しては頭が痛いのではないでしょうか。そのゴミに世界で最も早く目をつけ、国ぐるみで環境問題に取り組み、いまでは世界の模範として注目されているのがドイツです。
 そのドイツのゴミ問題について、なぜそうなのか、探ってみたのが今回の本です。
 少しでもみなさんのご参考になれば、こんなにうれしいことはありません。
 
 さてもう一つ、これは最近の日本を巡る世界の情勢についての感想です。
 といいますのは、、正論三月号にて、櫻井よし子氏は「問題提起・フジモリ氏をめぐって問われる国家の原則」、を書いておられます。お読みになられたかたもいらっしゃると思います。
 これに関して、私の意見をちょっとここで述べてみたいと思います。 氏の主張されるところは、一応同意できそうな部分もあります。ですけれど、その一方で氏は理想論に走りすぎて、国際政治のシビアな現状を捉えきっておられないなと思いました。
 
 一月に日本へ帰国したおり、曽野さんのお宅へお伺いし、三浦先生と曽野さんからこの一件に関していろいろお話してくださったこと(一見、とりとめのない話に見えましたけれど)をドイツへ帰国して頭の中でまとめてみましたところ、そこからは、ただその国際政治の厳しい現実だけが浮かび上がってきました。これは私がヨーロッパに居て肌でひしひしと感じる厳しさとまったく一致しています。。
 たとえば、欧州では、曽野さんがフジモリ氏を匿われた直後から、がらりとそのフジモリ氏に対する風向きを変えています。なぜそうなのか。これはキリスト教圏に住んでいて初めて理解できることです。
 当時こちらで掲載された記事には、(一部新聞の切り抜きも持っています)ちゃんと曽野さんのなさった勇気ある行動についても記述されました。これがいかなる意味をもつものであるか、日本にいるとその意図とか真意が伝わりにくいかと思います。櫻井氏はその辺の事情がよくのみこめないまま、あのような問題提起をなさったような気がしてなりませんでした。。
 
 いずれにしろ、この問題に関しては、私ももう少し腰をおちつけてじっくりと考えてみたいと思っているところです。
 では今回はこれで失礼いたします。
 ごきげんよう。

 2001年2月8日
 クライン孝子

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