weekly business SAPIO 2000/5/25号
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                                      クライン孝子 TAKAKO KLEIN
                                             

《日本国民の血税から支払われている国連分担援助金の行方を把握せよ!》


 今回は、先ず過去3年にわたる主な国連拠出分担金比率を列記することから始めたい。
 トップのアメリカはこれまでずっと25%だったが、2000年には21%引き下げを強く希望している。
 一方日本は98年=約17.98%、99年=約19.98%、2000年=約20.57%と引き上げられ、アメリカを抜く勢いにある。
 3位のドイツは、98年=約9.63%、99年=約9.80%、2000年=約9.85%で、毎年わずかながら引き上げられているものの、その割合は日本と比較すると約10%も低い。
 念のために、2000年における分担金比率の4位以下も記しておくと、4位はフランスで約6.54%、5位イタリアが約5.43%、6位イギリスは約5.09%である。
 では常任理事国であるロシアと中国はどうか。ロシア=約1.07%、中国=約0.99%と開発途上国並みである。

 なぜ冒頭でこのような国連分担金比率の数字を列記したかというと、国連が発足して50年余、その間巨大な機関としてそ存在を誇示してはきたものの、アメリカが滞納というサボタージュを繰り返すまでもなく、今やその国連の硬直化、それに伴う財政破綻は必至であるからだ。
 にも拘らず、日本はひたすら世界における唯一の平和工作機関として国連に希望をつなぎ、常任理事国入りを目指して、その国連機関の財政を支え続け、労を惜しまないでいる。
 ところが、実情はその日本の思惑とはウラハラだ。何と国連加盟主要国(主として国連常任理事国)は、そのウラを掻いて国益を優先させ、戦争を煽っては巨大な外貨稼ぎとなる武器売り込みに狂奔し、巨利を貪っているのである。
 先週レポートしたアフリカの国シオラレオネもその一つだが、北アフリカでも同様のことが起っている。

 というわけで、国連を舞台とした北アフリカのエチオピアとエリトリアにおけるタカリの構造と、それをいいことに武器売買に狂奔する大国の実態を、前回に引き続きレポートして見ようと思う。

 かつて、エチオピア(人口約5840万人)とエリトリア(人口約370万人)は一国でイタリアの植民地だった。その後1974年にエチオピアが独立、さらに1993年にはエリトリアがエチオピアより分離し独立した。
 世界で最貧国に数えられる両国は、エリトリア独立後に国境問題がこじれ、1998年より両国の間で紛争が勃発してしまった。この紛争により約10万人の命が奪われ、約800万人が飢餓すれすれの状況にあり、約2500万人が定期的に国連などの国際機関を通した食料支援を必要としている。
 この間少なくともエチオピア側は10億マルク、エリトリア側は2億4000万マルクもの戦費を消費したといわれている。

 見るに見かねたアメリカとイギリス両国が今回国連安全保障理事会でこの紛争問題を取り上げ、ロシアとフランスの激しい抵抗のなか、「1年という期限付停戦になら応じる」という両国の合意を取りつけ、両国の停戦決議が採択された。
 だがその実、このエチオピア・エリトリア紛争では、エリトリア側にはロシアやブルガリアなど東欧諸国が兵器を、イタリアが軍需品を、エチオピア側にはイスラエル、フランス、中国が兵器を輸出(中国のばあいの兵器輸出の決済はエチオピア産のコーヒーが主)し、巨利をせしめている。
 しかも今回ロシアとフランスが「1年という期限付の停戦」に応じた背景には、既に1年分の武器を両国に売りつけてしまったという実情がある。ここには両国の「あとは野となれ山となれ」という冷酷なそろばん勘定が浮き彫りにされている。

 それだけではない。国連による停戦を理由に、軍需産業は一転して“平和利用”という隠れ蓑の下、“平和産業”という名を借りて、エチオピアやエリトリアの外交官と政府高官を仲介し、次々と企業起こしを行なっているのだ。武器を提供する側と武器の提供を受ける側とが結託して、次の紛争準備に備えているというわけだ。
 以下、主な会社設立とその取引先を列記しておく。

1. エチオピアの首都アジスアベバに本社をおく“メスヒン・エンジニアリング・カンパニー”では、飲料水とガソリンを兵士用という名目で軍隊に納入。

2. ロシアの“カム・アズ“社では、エチオピア全域にわたるトラック製造認可を取得、軍隊に納入。

3. “トランス・エチオピア”では、国際支援機間の救援物資運搬車の貸し付け業を開始、救援物資を軍救援に運搬。

4. “セラム・バス“社では貸しバス営業を開始、軍隊移動時の兵士運搬に利用。

5. 布製造会社“デブラ・ベルハン”では過去半年間で15万枚の毛布を製造、兵士に配布。

6. サウジアラビアの“コスピ”社では肉の缶詰工場を設立、この肉缶詰は軍隊に納入。なお、缶詰用の鉄は、即刻戦時の兵器産業に転用可能と踏んでいる。

 このような具合に、国連機関自体がタカリ構造を生み、手を貸しているのである。

 ここで、冒頭に記した分担金比率を考えて欲しい。つまり、この最大のスポンサーが日本国になるのだ。日本国民一人ひとりの血税が国連の支援金として国連に吸収されることは肯定したとしても、そのカネがこのような形で食いつぶされ、泡沫のように消えていることを、どれだけの日本国民が理解しているのだろうか。
 本来なら、このカネの行方を追跡する、つまり優れた人材をこうした国際機関に次々と送り出して監視に当たらせるのも、日本政府の大きな役目であるのだ。

 ところがその日本の政治家たちは何をしているか。
 総選挙を控えて、与野党の政治家がマスコミまで動員しお互いに揚げ足を取り、どうでもいいような言葉狩りをやってドロ試合を行なっている。そういう意味では、日本の国民、わけても政治家の国際意識の低さは、国連にとってはいいカモであり、タカリにするには格好の国と見られているのである。

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