クライン孝子の辛口コラム
ドイツからの警鐘 Vol. 3
「気になる”極東”の構図」    

 中国で2008年のオリンピック開催が決まった。おそらく日本には複雑な思いをしている人がかなりいるのではないか。
 
 そういえば、つい最近国際雑誌「サピオ」掲載の業田良家という人のマンガ「ど忘れに本政治」を読んでいたら、いかにも江沢民らしい人物がその中国オリンピック開催決定で「日本のODAで北京オリンピック会場を作るあるよ!」と発言しているのを見つけて、苦笑いしてしまった。
 
 日本が政府開発援助(ODA)を通して、中国に巨額の支援を行ってきたことは日本人なら誰一人として知らぬ者はいないからだ。例えばこの支援が1979年から開始され既に20年以上経ていること、その額たるや6兆円にも上っていること、その割には中国から感謝されていない。むしろいいように翻弄され恫喝の材料にされいることなど・・・・・
 
 「ドロボーに追い銭」とはまさにこのことをいうのだろう。
 今回の小泉総理靖国神社参拝問題だってそうだ。中国はあれこれいちゃもんをつけ、何とかして小泉首相の靖国神社参拝を中止しようと躍起になっている。中国に協力しそうな日本のマスコミへの働きかけによる情報操作がそうで、このような中国の出方をみると、一体、中国は日本を何と思っているのかと、腹が立つ。
 
 とこういきまいて憤慨する私も、実をいって、その自信が余りないのだ。というのも、近ごろ、日本が位置する極東アジアが刻々と緊張しているような気がしてならないからだ。、台湾問題、北朝鮮問題、さらに二十一世紀の前半、必ずやアメリカを凌駕しその強敵として登板する中国の台頭、落ちぶれたとはいえ今もその中国への影響を弱めていないロシアと、その情勢は片時も目が離せない。
 
 最近になって、アメリカが何をさしおいても日本を味方につけ、緊密な兄弟関係を築こうとしているのも、アメリカがこうした緊迫した極東の新しい動きをとっくにキャッチして次の手を打とうとしているからだろう。
 アメリカとしては、この際、日本を全面的にバックアップして極東における安全保障の強化に一役を買おうとしているのだ。
 
 そうさせまいと懸命にその動きをけん制しているのが中国である。一方韓国にしたって、この動きを放置することはできない。この国も中国と同様、アメリカと日本が手を組んで極東における主導権を握られては困る。そこでその動きを阻止しようと日本へ攻勢をしかえて、敵意をむきだしにしている。
 
 そういう意味では、今や日本は極東の「台風の目」である。日本の出方しだいで極東情勢はどうにでもなる時期に入ったといっていいからだ。
 
 それだけに、日本はよほど腹を括って慎重かつ大胆にことに当たらないことには、後世とり返しのつかない事態を招くことになりかねない。
 
 靖国神社公式参拝問題もそうだ。なぜなら今年は二十一世紀幕開けの最初の年で、第二次世界大戦後約半世紀にわたって戦争に負けたがゆえに引きずってきた日本の贖罪意識と卑屈感をこの首相公式参拝によって、一挙に払拭するのにまたとない絶好の機会だからだ。それに今日の日本の繁栄をもたらしたそのエネルギーとは、そもそもあの戦かいにあってあえなく命を落としたその犠牲者の血なくしてはなかったからで、彼らを弔うことは、日本の国民にとって当然の義務なのだ。
 
 というわけで、小泉総理には何としても、今年8月15日の敗戦記念日には靖国神社公式参拝を実行してもらいたいものである。そう、中国や韓国に屈するようなぶざまなまねだけはしてもらいたくない。 



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