クライン孝子の辛口コラム
ドイツからの警鐘 Vol.11
長期スパンで小泉政権を助けよう    

小泉政権が成立して一年が過ぎた。当時私は日本に帰国していたものだから、偶然その一部始終を目撃してしまった。

森総理不人気をふっ飛ばし颯爽と登場した小泉内閣! 組閣からして意表を突いていた。従来の派閥優先の自民党常識をかなぐり捨てて、いきなり一本釣り方式で組閣してしまったからである。閣僚に五人もの女性を起用したことも斬新だった。とりわけ外相という重要ポストに日本議会史上初の女性大臣を登場させた。

まもなくこの大臣は失態続きで期待外れに終わり更迭されたものの、再び女性にその白羽の矢が立った。結果男性顔負けの鮮やかな外交手腕を発揮し国際舞台に踊り出た。それだけではない。その後の小泉政権一年を振り返ってみると、あの九月十一日テロ事件がきっかけのなったこともあって、日本の安全保障政策に随分進展が見られた。

確かに景気に関してはなおざりにされたけらいがないではない。だがこれは何も日本に限らず世界的傾向で、中国のような一部の国に除いて先進諸国は軒並み四苦八苦している。つまり小泉総理一人の力ではどうにもならないのだ。その代わりに政治を国民の目線において、政治家も含め官の不祥事を公開しその実態を国民に知らしめた。

だからこそ私はこの一連の小泉政治に関しては、日本政治の大きなターニングポイントと位置づけ、極東の大国日本にもいよいよ「ベルリンの壁」症候群ならぬ従来の旧体質型政治に風穴を開けられたと見て心から声援を送った。今もその気持ちに変わりはない。

 ところが今回、再び日本へ帰国して驚いた。その日本ではかつての小泉フイ―バーはどこへやら、国中がまるで手のひらを返したように小泉外しムード一色に塗り唾されていたからだ。小泉内閣が一年目に入ったことで、小泉総理をよく思っていない勢力がメデイアを動員し引きずり下ろそうとあれこれヤミ取引をし、小泉総理に近い人物を一人ずつ失脚に追いやるという。

 一年経ったからそろそろ総理の首を摩り替えたい政治家が、総理や大臣にありつきたいと、互いに足の引っ張り合いをしている。彼らの目当てはポジションのみで、国家の命運などそれほど重要でない。

 しかもあろうことか、この小泉下ろしドラマにひたすら片棒を担いでいるのがメデイア人間というのだからお話にならない。そういえば、近ごろインテーネット・テレビで日本の報道ぶりを見る機会が多いが、あの番記者たちと呼ばれているメデイア人間の政治家に対する無礼ぶり!、質問というより怒号に近い乱暴な言葉を平気で投げつけている。ドイツのメデイア人間を見なれているせいか、そのマナーの悪さにはびっくりしてしまう。腑に落ちないのは、彼らはそのマナーの悪さに加えて政治家の揚げ足取りに狂奔し、結果やる気充分な才能ある政治家の芽を摘み、日本の政治を不毛に追いやっていることだ。

 「正義」という名のもと何を言ってもいい書いてもいいというものではない。この辺ドイツのメデイア人間は大人である。政治家も人の子、プライバシーはそれがスパイに悪用されない限り、至って寛大だからだ。

 日本ではこれまでにない長期不況に見舞われ人の心が荒んでいる。だからこそ、それに火をつけるような行為は避けるべきで、今は苦しくとも歯を食いしばってこの苦境を乗り切る。それには世界的視野に立って日本を見つめることが大切なのであり、その限りにおいて今少し長期的なスパンで「腹を括って国民のために頑張る」小泉総理を温かく包んでバックアップすること。今の日本のメデイアの役目である。

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